体罰をやめる決意

CAPのおとなワークショップがあったある夜のこと。

終わって帰ろうと、駐車場に行ったら一人の女性が暗闇に立っていた。 
よく見ると,ワークショップに参加していた人。

「あのー、ひとつだけ聞いてもいいですか?」
   堅い思いつめた表情で、でもまっすぐに真剣に私を見据えている。

「もちろん、どうぞ」

「子どもがお友だちに暴力をふるった時に、それがどんなに痛いことかわからせるために叩くのも、体罰なんでしょうか。」 

ああ、苦しんでるんだな。
子どもに求めているんだな。
彼女の気持ちを受けとめて、彼女が納得できるように話してあげたい。
一瞬そう思った。 

でも、もう一度彼女の目を見た時,
”ああ、この人は答えはわかっているんだな。わかっていて、誰かにきっぱり言ってもらうことで、自分にふんぎりをつけたいんだな。”と感じた。

「お気持ちはよくわかるけど、それも、体罰です。」
    はっきりと、ゆっくりと言った。

彼女は表情も変えずしばらく黙っていたが、
「よくわかりました。本当にありがとうございました。」
    きっぱりとそう言って,暗闇の中に消えて行った。


その日は、夜のワークショップでもあり、私は当時小学校3年と5年の二人の子どもを連れてきて、別室で遊ばせてもらっていた。
そばで車に乗り込もうとしていた子どもたちも、彼女のただならぬ気を感じたのだろう。息をつめて私たちのやりとりを聞いていたが、

「お母さん、あれしか言わないのにあの人よくわかったね。」
   と息子が言う。

「ちゃーんと子どものことを大切に思っているからだよ。いっぱい苦しんできたおとなだからだよ。」

息子は狐につままれたような顔をしていたが、私は自分で言いながら胸が熱くなった。


彼女の決意にエールの嵐!!!



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